ビンテージライダースのジッパー交換
今回は大変貴重なライダース、デュラブルのワンスターのジッパー交換になります。映画wild oneでマーロンブランドが着用していたライダースです。自分はバイクには乗りませんが、流石にこの映画は見ておりますし、スタイルのかっこよさに憧れは抱きます。
正直なところデュラブルは初見でしたが、名品と言われてるだけあり他のライダースと違う重厚さというかオーラがあります。革質も肉厚で弾力があり、良い革を使用しているのが明らかによく分かります。
今回はそんなライダースのフロントジッパー交換で、特別な緊張感のある作業になりましたが、当店の手順はビンテージのライダースでも通用しますので、いつも通り作業をこなし、無事納品する事ができました。
交換に使用するジッパーですが、依頼者様にご用意いただいたクラウンの10号になります。
オリーブテープのクラウンを黒染めペンで染色されております。テープ色黒のクラウンの10号を探すのは困難を極めるかと思います。
黒染めペンの染まり方がややスミ黒のような色味で、ビンテージに使用するにはかえって雰囲気が合うと思いました。
ミリタリーユースのクラウンとはエンドボックスの形状が異なるようです。たとえば、同じジッパーが手に入った場合は片側のみ交換という事も可能ですが、今回はボックスの形状の違いで互換性はありませんでした。
作業においてビンテージの革ジャンの怖いところは、作業負荷による革のひび割れの悪化です。年代の割に革の状態は悪くない方かと思いますが、どうしても経年によるクラックがあります。
通常縫製は裏面から縫い合わせますので、下の写真のように生地をひっくり返しながら作業をしますが、クラックのある革をひっくり返してしまうと、ぎん面(表面)が剥がれてしまったり、最悪の場合穴があいたり裂けたりします。基本的に古い革ジャンはひっくり返さずに作業するようにしております。
ひっくり返さず、かつ革を無理に折ったりしないように作業する。
右見頃側のジッパーの取り付けは、裏地の一部を解いてそこから縫い付けていきますが、「え?これだけしか解かなくてどうやってステッチいれるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ここが当店のノウハウになります。
右見頃はミシンで縫いますが、左見頃側は手縫いで縫います。理由は二つありまして手縫いが圧倒的におすすめです。
①解き跡
ダブルの場合、衿を開けて着るか閉めて着るかで2wayになってますよね。ミシンで縫った場合は裏面は外れる可能性が高いので、どっちかの面が犠牲になります。
②衿の返り
衿がかえってるという事は表側の生地が伸びているのはイメージできますでしょうか?
元々、表革と裏の革の穴の位置関係は均一ですが、衿で曲げられる事によって表側は長く、裏側は狭くなってしまっております。手縫いで縫う事によって、元と同じようにキレイに衿が返ります。
衿を手縫いしてると、縫ってるうちからキレイにかえっていくんですよね。この辺は動画にすると分かりやすいかもしれません。
このような手順を踏みながら無事作業を終える事が出来ました。以下は完成の写真になります。
この度は遠方からご依頼いただき誠にありがとうございました。どうぞまたよろしくお願いいたします。
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