ジーンズの幅詰め徹底検証

今回は、ジーンズの幅詰めを様々な角度から徹底検証いたしました。休日を利用しながら少しずつ企画を進めさせていただいておりました。ご依頼いただいている中での作業で申し訳ありません。

また、私のだらしないボディで撮影を行っております。お見苦しい点もあると思いますがどうかご容赦ください。



まずそもそもですが、ジーンズの幅を詰めるにあたっては、3パターンが考えられます。

・内股で詰める

・外脇で詰める

・内・外どっちも詰める


今回は全て検証してみたので、少し見づらい部分もあるかもしれませんが是非ご覧ください。


今回検証に使用したのはリーバイス503BXXです。幅広股深で、幅を大きく詰めると問題の出やすいジーンズです。

90年代の名品ジーンズで、ちょっと勿体無い気もしますが、他に良いのが思いつきませんでした。


今回はこのジーンズの裾幅を、24cmから18cmに詰めて検証します。平置き6cm詰めです。


1、外脇で詰める。

ジーンズの幅詰めにおいては外側で縫われる事は多いと思います。なにせ縫って割ってあるだけなので縫うのが簡単です。

まずは外側1発で6cmとってみます。




平置きのシルエットはこんな感じです。




着てみるとこんな感じです。



脇が浮いて、ボンタンのような、ジョッパーズのようなシルエットになってます。

耳を捨ててこの形ではちょっと厳しいかもしれません。



2、内股で詰める

次は内股で6cm詰めてみます。




平置きのシルエットはこんな感じです。




はいてみるとこんな感じです。



裾のシルエットは悪くないのですが、ももの付け根にシワが出来ています。これはちょっときになりますね。



3、内股・外脇両側で詰める。

内脇3㎝、外脇3㎝で左右に詰め寸を分散してみました。




平置きはこんな感じです。




はいてみるとこんな感じです。






左右で詰めた結果、両方の短所が分散される形となりました。この辺は好みかもしれませんが、やっぱり脇でボンタンのように浮いているのは気になります。

脇の耳を犠牲にしてまで、脇で詰める必要があるでしょうか。



恐らくジーンズメーカーによっては、ジーンズの脇のあたりというのはち密な設計が施されている箇所であります。

・縫う糸の太さ

・縫う糸のテンション

・縫う糸のピッチ

・縫い代の幅

を考慮して、この脇のあたりを美しく出す計算をしている事と思います。

脇を詰める事で良いシルエットが出るのであれば耳を捨てるのもありかもしれませんが、ここの箇所はジーンズの顔とも言えますので、やはり詰めるのは得策ではないでしょう。




という事で話をまとめますと、当店としてはジーンズは基本的には内股で詰めるのが良いと考えておりますが、当然例外はあります。ウエスト全体を詰める場合、体形の都合や、ジーンズのパターンが特殊な場合もあるので、あくまでケースバイケースであります。


※ちなみにスラックスは外脇を詰めても問題はありません。詳細は割愛させていただきます。今回はあくまで「ジーンズ」の話です。


で、ここから話が更に続きます。



4、では内股で詰めるとして、ももの付け根のシワをどう考えるか。


さて、基本的には内股で詰める方向で考えているわけですが、問題はももの付け根のシワです。以下の対策が考えられます。

・小股を詰める

・裾の詰め分を少なくする。

・前空きと尻ぐりの角度を起こす(ウルトラC)




また順を追って見ていきます。


・小股を詰める。

小股とは、前開きの下の股の部分です。ここを詰める事により多少のシワをとる事が可能です。


詰めてみますと平置きはこんな感じです。縫い代が表に飛び出していますが仮縫いのためです。




着てみるとこんな感じです。




内股だけ詰めたものと比較すると、、、

どうでしょうか?そこまで大きな変化は見られないような感じがしますが、着用感としては少し、もたつきがなくなったような感じです。



・裾の詰め分を少なくする。

実際のところのご提案としては基本的にこのパターンです。裾の詰め分をへらす事でシワは軽減できます。

先程の両脇幅詰めの写真、内股の詰め分を3cmまで減らすと大分目立ちませんよね。


そのためこのジーンズは4cmあたりが限界なのではないかとあたりがつきます。


しかし、この提案をするには、

仮縫いが必須です。

切ってしまったら出せないので、やはり仮縫いはかなり大事です。

特に、今回のように分量が多い場合はマストになってきます。

当店ではジーンズの幅詰めに関してはなるべく仮縫いする方向でご案内させていただいております。





・前開きと尻ぐりの角度を起こす(ウルトラC)

ではここでウルトラCの技、前開きと尻ぐりの角度お越しの検証です。

この直しは、今回のように幅広で、かつあまり色落ちしていない状態で、更にコストをかけても良いという条件が揃っている場合には有効です。


さっぱり意味不明なタイトルだと思いますが、図を見れば一目瞭然。

ジーンズの前身ごろを外して、アイロンをかけてベターっと伸ばすと以下の図のような形になります。



この前開きの角度を起こすのです。つまり以下の図のようになります。

。。。そうなんです。わたりが詰まるのです。しかもももの付け根のシワの原因のあまり分も取れます。

という事で、このお直しを実際にやってみました。


まずは前開きと尻ぐりを解きます。



前あきを分解して先ほどの図のように裁断します。




後ろも同様に行います。




あとは内股も裁断していきます。




という事で裁断が完了しました。




という事で、まず尻ぐりから縫っていこうと思いますが、デモンストレーションということで、折角なので糸をちょっと変えてみました。ピッチもあえて粗目に縫ってみました。

当然、巻き縫いで戻しますが、チェーンではありません。




次に前開きを縫い戻します。まず持ち出しにロックミシンをかけるのですが、ボタンが邪魔でミシンが入りません.....




なのでスレキでパイピング処理しました、これならギリギリミシンがはいります、



そして見返しを取り付けて、ステッチをいれます。ここはあえてオレンジとイエローでいきました。



そして全体を組み上げました。小股はxxっぽくあえて極太ステッチで縫ってみました。




因みに、持ち出しパイピングの雰囲気はこんな感じです。どうでしょうか?個人的には好きです。





ここからが本題ですね。内股の縫製ですが、まず縫い合わせてロックミシンをかけます。ロックミシンはジーンズ用に調整した太糸仕様のミシンです。

糸の色もあえて白にしました。白の方がオリジナルっぽくて好きです。




さて、ここからが大問題の内股のステッチです。ここは一般的なリフォーム店では、以下のようにトンネルにして縫っていきます。

ただしこれですと、股の中心で途切れてしまうし、ヨレやすいです。





という事で、当店では筒形ミシンで右裾から左裾まで一気に縫います。




しかもチェーンステッチです。




あとは裾上げや閂を打って細部を仕上げて完成です。




という事ではいてみました。





加工前と比較してみますと、大きなシワはとれてすっきりしましたが、少し横ジワがでてます。横ジワはゆとりが無いと出るので、もう少し分量甘めでもよかったかもしれません。

ただ個人的には横ジワはジャストウエストのジーンズで出るあたりなので、アリかとは思います。



最後に、ジャングルファティーグと合わせて着てみました。60sのアイテムにテーパードシルエットはよく合います。

とりあえず503BXX感は良くも悪くも完全に無くなりました。




総論 ジーンズの幅詰めは基本内股詰めで、あとはお客様の条件に合わせていく。


ジーンズに関して言えば、あたりがずれるからそもそも解けないケースもありますし、予算もあると思います。そういう意味では、以下のような図のもとに、お客様の条件下でなるべく最善のご提案をしていく事が大事だと思いました。




また、仮縫いは必須。


と、改めて思いました。当店ではジーンズの幅詰めに関しては仮縫いをできる限り行わせていただいております。




以上、大変長い記事になってしまい、果たしてここまでご覧になっている方が存在するのが疑問ではありますが、最後に料金だけお伝えしますと、


ジーンズの幅詰め(内股)3500円~5000円(税抜き)となっております。

前開きと尻ぐりを起こす修理をすると、プラス8500円〜になるかと思います。


今後ともどうぞ、ご依頼のご検討の程よろしくお願いいたします。



MASIZIN(マシジン)|ジーンズリペアやリブ交換、厚物縫製が得意な洋服お直し屋です。

茨城県水戸市の末広町で洋服の直しを行っております。チェーンステッチ裾上げ出来ます。

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