綿糸とコア糸

今回はちょっと綿糸に関して説明してみようと思います。まずこちらのポケットを見てみてください。



次にこちらを見てください。





後者の方がステッチが自然に馴染んでるように見えませんでしたか?つまり後者のジーンズが綿糸縫製になります。

当然といえば当然ですが、生地と同じ綿100%作られており、しかも生地がスレれば糸も一緒に退色してますので、生地にしっかり馴染んでくるんですね。

しかも綿糸は洗濯によって糸縮みがおきます。それにより生地に沈み込んでいくので、さらに表情が豊かになります。

因みに前者のジーンズはポリエステルスパンになります。






こちらはリーバイスのいわゆるXXです。最終期との事で60年代ですが、糸は当然綿糸縫製です。この上品さと、柔らかさと、粗雑さが同居した究極の雰囲気に綿糸が一躍かっていることは、一目瞭然です。








つまり、綿糸縫製がジーンズの雰囲気をぐっと引き立てる事は間違いないのですが、もう一度先ほどのジーンズに戻って改めてよく見ますと、ポケット口のところの糸が切れ始めてますね。







綿糸の弱点は「耐久性」です。綿糸はスレに弱いです。特にチェーンステッチとの相性が悪いのです。チェーンステッチは糸が盛り上がってしまうため、ダイレクトに糸をこすってしまうんですね。

以下は長期間はかれたデニムです。腰帯のチェーンステッチにかなりダメージがありますが、これは製品不良とかではなく、綿糸だからです。








こうなってまいりますと、「この綿糸の雰囲気も楽しめながら、切れにくい糸があればな~」と思うところでありますが、あります。それがコア糸です。

コア糸は、ポリエステルの芯糸を綿でラッピングした糸になります。







リーバイスですと60年代後半、BIG Eからコア糸が使われ始めます。当初はヨークや腰帯、尻ぐりなど、スレてほつれてくると困るところにコア糸が使われて、ベルトループや裾、閂などほつれても大して差し障りのないところに綿糸が使われて、徐々にコア糸に移行していきました。66前期のスモールeでほぼコア糸縫製ですよね。

写真はbigE後期ですね。ポケットとベルトループが綿糸になってます。あとはコアです。





にしてもアーキュエイトはコアでポケットは綿糸という。アーキュエイトが解れる事は良しとしてなかったんですかね?ポケットの方をコアで縫った方が良い気がしますけどね笑 実用ベースだと笑






ただ自分としては、コア糸縫製で真っ先に思い浮かぶジーンズはバレンシア復刻です。いわゆるボタン裏5・5・5ですね。

以下バレンシア復刻です。糸が発色を保ちながらやや退色し、綿糸のように糸馴染みが良いですよね。まっ紺からこんなになるまではいてるのに、アーキュエイトがノーダメージという。綿糸でここまでアーキュエイト維持しようと思ったら、基本立ちっぱで空気椅子ですよね笑  



ただコア糸は芯糸のポリエステルがちょっとチラつきますので、綿糸ほど完全にマッドではないですね。コア糸の利点はとにかく切れにくいので、ほつれのメンテナンスを考えなくも良いところはお客様にとってはメリットかと思います。リペアに出す手間も、コストもかかりません。

綿糸だと育てていく中で100%糸が切れるので、リペアが必ず必要になります。



ただ実際のところ、レプリカメーカーは綿糸で縫製されてるケースが多いですね。

エヴィス、ウェアハウス、フルカウント、フラットヘッド、フリホ、サムライ、マッコイズ、桃太郎、東洋この辺のアメカジメーカーは綿糸縫製です。最近のメーカーでボンクラやtcbは綿糸ですよね。ダルチザン、JBJはコアですね。ヌーディ、デンハム、apcなど海外系はコアですね。ダルチザンは品番によるかもしれません。リゾルトはXXは綿糸、66モデルはコア糸と綿糸混合で縫ってますね。鬼デニムやアイアンハートなどヘビオンスはコアだったと思います。ごめんなさい。うるおぼえのところもありますので参考程度でお願いします。



因みにですが、前述の通りリーバイスのバレンシア復刻はコア糸ですよね。まあ世界市場に向けて販売するには切れてしまう糸は使用できませんよね。「oh!なんで作業着なのに解れるんだ!みたいな汗」

ただ2000年頃のリーバイスジャパンの復刻は綿糸を使っているんです。よくよく考えるとリーバイスの綿糸縫製ってオリジナル除くとこの時だけなんです。(僕もそれほど詳しくないので間違ってたら申し訳ありません。)

お客様が履きこんだ2000年頃のbigEの復刻をリペアでお持ちになられた事がありましたが、オリジナルにしか見えませんでした。糸の退色の感じとか切れ方がすごいリアルでしたね。





この時のリーバイスを縫っていた糸は言わずと知れた烏城物産さんですね。そしてそもそも烏城物産さんがXXの綿糸を作るようになったきっかけは、現リゾルトのジーンズレジェンド、林さんからの提案からだったそうです。





と、今まで営業してきて見たり聞いたりした事から出来る限り説明させていただきましたが、最後に鬼履き(洗わずに履く)する場合は、ホントはコアの方が向いてます。綿は皮脂や汗を放置するどドンドン劣化してきますので、綿糸縫製は元々弱いのにさらに弱くなってしまいます。

なのでホントは綿糸縫製のジーンズはこまめに洗濯される方がよいですね。糸も長持ちしますよ。



皆さんも一度、お気にのジーンズの糸を見られてみてはいかがでしょうか?







MASIZIN(マシジン)|ジーンズリペアやリブ交換、厚物縫製が得意な洋服お直し屋です。

茨城県水戸市の末広町で洋服の直しを行っております。チェーンステッチ裾上げ出来ます。

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